大学における文化芸術推進事業

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育成実績紹介インタビュー

学校法人 早稲田大学
舞台公演記録のアーカイブ化のためのモデル形成事業
~育成実績紹介インタビュー~

= プロフィール・キャリア =
辻村優子(俳優)
1985年生まれ。浜松出身。多摩美術大学を卒業後、新国立劇場の演劇研修所を修了。以降、フリーの俳優として舞台を中心に活動。商業演劇から小劇場まで幅広く出演。主な出演作に、こまつ座松竹『もとの黙阿弥』(演出:栗山民也)劇団朋友『残の島』(演出:西川信廣)serialnumber『hedge3 trust』(作演出:詩森ろば)円盤に乗る派『仮想的な失調』(演出:カゲヤマ気象台・蜂巣もも)など。2016年頃からENBUゼミやプロダクションでファシリテーターとしても活動。また最近は、自身のセラピストの経験と演技がもつ共通点に着想を得て、見ると体がほぐれる演技を上演作品の創作を通して探求を深めている。 『サロン乗る場』(22’)『ほぐしばい~実話怪談編~』(23’)
= 参加した事業 =
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館「舞台公演記録のアーカイブ化のためのモデル形成事業」2022年度・2023年度連続講座の会場受講生
https://w3.waseda.jp/prj-archivemodel/kouza/2022-2/

= 事業に応募した経緯 =
去年の6月の募集時に、知り合いの演出家の方がTwitterでシェアしていたことがきっかけで応募しました。ちょうど去年、同じ作家の違う作品に連続して出演することになり、それがすごく面白いことだと思って俳優の目線から記録できないかと悩んでいた時期でした。他に活動を記録するようなことを学べる機会もなく、記録する活動に名前がついてるとは思っていなかったので、まずは目の前にあるこの講座を入口として受けてみようと応募しました。

ドーナツ・プロジェクトって、名前もデザインも可愛かったので親しみやすいという意味でドーナツなのかなと思って応募要項を読んだら、書かれていたコンセプトが自分の思っていたことと合致した感じがありました。自分が何に興味があって、何をやってきたのかということを自分なりに可視化したいと思っていたんです。保存のためにどういうノウハウが必要なのかということとは別に、提唱されている考え方にすごく共感しました。

= 事業で学んだこと =
まずアーカイブすることについてこれだけの時間集中して考えることができたというのが、一番したかったことと同時にできたことだと思います。色んなジャンルからこの講座に参加している人がいるということが驚きでもあり、良かったことでした。まなざしや目線は違っても、同じような問題意識がある人たちがこれだけいるんだと。初めは何か一つポイントがおさえられれば、アーカイブは簡単にできると思っていました。けれど、これだけの専門家がこんなに頑張っていることを知って、地味に積み上げていくことは誰にとっても変わらないんだなと思いました。この講座を受けて、それを肌で感じられたのが一番収穫と言いますか、自分を変えました。一番大きく自分を変えた要素だったと思います。
= 事業で学んだことを活かせた事例 =
今年の2月・3月に自分が主体になって作品を作った際に、これまでと比べて圧倒的に記録を取りました。6人のクリエイションメンバーと私が1対1で話をして、稽古を重ねていくという少し変わった作り方をしていたのですが、それぞれの人とのやり取りを記録して、その創作プロセスをnoteの連載として公開しました。結果的にアーカイブ自体が作品になりうる強度の高いレコードがとれて、それ自体がすごく面白かったのですが、幸いなことにその作品に対して批評を頂き、その中でnoteで公開した創作過程に言及していただいたこともありました。そこまで含めて見てくれるんだと実感してとてもありがたかったです。
講座での経験がすごく面白かったのですが、振り返り会やワークショップも、みんなが自分の話をできる時間があったおかげで、ただの受講生ではなくなった感じがありました。そこで、自分の作品の中にアーカイブをするということも含めて考えていこうと思えるようになりました。同時に、自分なりの仕事の仕方やこだわるポイントが無意識的にもあると気づき、ちゃんとしたアーカイブが欲しいと思い、現在自分自身のHPを作成中です。
■「ほぐしばい~実話怪談編~」のつくりかた【上演テキスト・柿内正午さんと】|辻村優子 (note.com)
https://note.com/tsujikomame/n/n9ebbeb377d6f
■「ほぐしばい~実話怪談編~」のつくりかた【キックオフミーティング】|辻村優子 (note.com)
https://note.com/tsujikomame/n/n70b1c136a061
■「ほぐしばい~実話怪談編~」のつくりかた【稽古一周目 中尾さん→涌田さん→浅倉さん】|辻村優子 (note.com)
https://note.com/tsujikomame/n/ncc5793017d76
■「ほぐしばい~実話怪談編~」のつくりかた【稽古二周目 中尾さん→浅倉さん→涌田さん→田上さん】|辻村優子 (note.com)
https://note.com/tsujikomame/n/n3d33430c2fbd

『ほぐしばい~実話怪談編~』
2023年6月23日㈮・25日㈰(全三回)
会場 :おぐセンター2階
企画・実践 :辻村優子
上演テキスト :柿内正午
演出協力 :浅倉洋介、田上碧、中尾幸志郎(散策者)、涌田悠 
俳優・辻村優子による、もみほぐしと演技の探究の一環として、6月23日~25日に開催されたイベント円盤に乗る場「NEO表現まつり」にて発表された。
■「サロン乗る場」のつくりかた|辻村優子 (note.com)
https://note.com/tsujikomame/n/ne5ba073cb1c1








『サロン乗る場』
2023年2月20日㈪~3月25日㈯
会場 :円盤に乗る場
企画・実践 :辻村優子
嗅覚(アロマのプロデュース) :遠藤麻衣
味覚(飲み物のプロデュース) :田上碧
触覚(施術内容のプロデュース) :蜂巣もも(グループ・野原)
聴覚(BGMのプロデュース) :カゲヤマ気象台(円盤に乗る派)
視覚(室内空間のプロデュース) :中村大地(屋根裏ハイツ)
ふるまい(接客のプロデュース) :渋木すず(円盤に乗る派/ちょっとしたパーティー)

もみほぐしと演技の相互関係を探究する、俳優・辻村優子による、リラクゼーションサロンの形態をした演劇作品。
リラクゼーションサービスを形づくる要素を、それぞれの感覚を担当するアーティストと稽古を重ねる手法で作られた。
観客は予約フォームから希望の時間帯を予約し、当日会場にて辻村によるもみほぐし(演技)を受ける。
期間中、全43回の上演を行った。
= 今後のキャリアプラン =
アーカイブを大事にしながらクリエイションを続けることはこれからもやっていきたいです。同時にクライアントワークとしての俳優業もちゃんとできるようになりたいと思っています。そのために自分が人にどんなものを提供できるかを掴みたいというのが活動の根幹にあります。そして、自分の土台が固められたら、もう一つ自分のステージをあげるためにもう一回勉強をしたいです。台詞劇へのアプローチを学びなおすために、イギリスに留学したいなと。これも、今まで自分では手が届かないと思っていた助成金の応募に対する苦手意識が、アーカイビングの作業を進めていく中で少しずつ「あれ?私これがんばれば何とかできるんじゃないか」という気持ちになってきました。自分の活動を振り返ることができたおかげで、次にどこへ行きたいのかということを具体的に考えられるようになりました。闇雲に大きい夢を持つみたいなことではなく、これまでの活動とこれからのビジョンをちゃんと線で繋げて考えられるようになったと思います。

国立大学法人 北海道大学
ミュージアムにおける異分野との「対話」と「寄り添い」を通じた人材育成事業
~育成実績紹介インタビュー~

= プロフィール・キャリア =
大澤夏美(ミュージアムグッズ愛好家)
1987年生まれ。札幌市立大学でメディアデザインを学ぶ。在学中に博物館学に興味を持ち、卒業制作もミュージアムグッズがテーマ。北海道大学大学院文学研究科(当時)に進学し、博物館経営論の観点からミュージアムグッズを研究し修士課程を修了。会社員を経てミュージアムグッズ愛好家としての活動を始める。現在も「博物館体験」「博物館活動」の観点から、ミュージアムグッズの役割を広めている。2023年4月より、北海道大学大学院文学院人文学専攻文化多様性論講座博物館学研究室で博士後期課程に進学。主な著書に『ミュージアムグッズのチカラ』『ミュージアムグッズのチカラ2』(いずれも国書刊行会)、『ときめきのミュージアムグッズ』(玄光社)がある。
= 参加した事業 =
北海道大学学芸員リカレント教育プログラム
北海道大学プラス・ミュージアム・プログラム
= 事業に応募した経緯 =
2018年度は会社員としての生活を一区切りし、ミュージアムグッズ愛好家として歩もうと考えた節目の年です。その時点ですでに大学院を修了してから5年経っており、ミュージアムについてもう一度学べる場所が欲しいなと考えていました。ちょうどその年に北海道大学学芸員リカレント教育プログラムの初年度が開講し、ミュージアムのリアルな姿を多様な受講生の仲間たちと学べるチャンスと考え応募しました。
その後、ミュージアムグッズ愛好家としての活動が軌道に乗り、ミュージアムグッズを領域としながらも、様々な分野と協同しミュージアムを外側からアプローチする活動に興味を持ちました。そこで2022年度より北海道大学プラス・ミュージアム・プログラムに参加し、社会課題をミュージアムの観点から向き合う取り組みに参加しています。
= 事業で学んだこと =
北海道大学学芸員リカレント教育プログラムでは、3年目である2020年度にZoomを活用したオンラインイベント「ミュージアムグッズサミット」を9月〜11月に3回開催しました。全3回を通じたイベントにはのべ200名以上の方が全国から参加し、70%以上が北海道外からの参加でした。私はファシリテーターとしてイベントを実施し、「ミュージアムグッズやショップについて語り合える場づくりに取り組み、ミュージアムグッズやショップ、ひいては博物館が社会においてどうあるべきかという議論がより活発になり、これらの重要性が広く認識されるように今後も活動を進めたい」という思いをより強くしました。
北海道大学プラス・ミュージアム・プログラムでは、2023年2月に開催されたクロージングフェスタ「対話と寄り添い」の関連イベントとして開催された情報交換会「地域とともにあるミュージアムのあり方を考える」が印象に残りました。北海道内を中心とした様々な地域や館種のミュージアム関係者が集まったクローズドイベントで、参加者との交流を通じてミュージアムの問題意識を共有し、新たな一手を探る機会になりました。
= 事業で学んだことを活かせた事例 =
北海道大学学芸員リカレント教育プログラムへの参加と並行して制作していた、私の自費出版誌『ミュージアムグッズパスポート』を元に、2021年に『ミュージアムグッズのチカラ』(国書刊行会)を出版しました。これは上記、「ミュージアムグッズサミット」を通じて生まれた、「ミュージアムグッズの持つ博物館の魅力を伝える力を広める必要がある」という学びを形にしたものです。メディアに広く紹介されたこともあり、現在までに4刷を重ねるヒットとなりました。
また、北海道大学プラス・ミュージアム・プログラムの上記情報交換会内で実施されたワークショップでは、「博物館の擬人化」を発表しました。このテーマにまつわる議論を深めるべく、2023年7月に開催された、第49回全日本博物館学会総会・研究大会、第61回北海道博物館大会で「博物館PRとしての「博物館擬人化」」としてポスター発表を実施しました。

■『ミュージアムグッズのチカラ』国書刊行会
https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336071071/
■『ミュージアムグッズのチカラ2』国書刊行会
https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336073686/
■『ときめきのミュージアムグッズ』玄光社
http://www.genkosha.co.jp/gmook/?p=28269
= 今後のキャリアプラン =
2023年4月より、北海道大学大学院文学院人文学専攻文化多様性論講座博物館学研究室で博士後期課程に進学したので、長期履修制度を利用しつつ研究を進めていきます。また、2023年12月を目途に新刊『ミュージアムと生きていく(仮)』(文学通信)を出版します。
ミュージアムグッズに留まらず、来館者が積極的にミュージアムを楽しむヒントを提供する書籍を積極的に出版していきたいです。そのためにも、北海道大学学芸員リカレント教育プログラムや、北海道大学プラス・ミュージアム・プログラムで学んだことを積極的に生かしていきたいです。

学校法人 東京音楽大学
伝承を担うフィールドからまなび、ともにつくり、地域へつなぐアートマネジメント人材育成
-伝統音楽・芸能の地域レガシーによる新たな価値創出を目指して-
~育成実績紹介インタビュー~

= プロフィール・キャリア =
真部 保良氏(株式会社グローカルメディア代表取締役)
官民連携のまちづくり(エリアマネジメント)に取り組み、その一環で、地域の賑わいや地域内外の人たちのつながりを生むイベントの企画、運営にも携わっている。
香川県三木町出身で、プライベートでは讃岐獅子舞を演じる東京在住者の団体「東京讃岐獅子舞」に所属。
前職の出版社で、建築・まちづくり分野などの専門雑誌『日経アーキテクチュア』の記者・編集者、自治体の地方創生推進アドバイザーとして活動。東京讃岐獅子舞では首都圏を中心とした各所でのイベントで演舞。
会社設立後の取り組みでは、広島県内の牧場で夏休みの約1週間、東京の小学生と地元の小学生、延べ約20人が一緒になって多様な体験をするイベントを開催。その中で、地元で活動するプロの和太鼓奏者の協力を得て、牧場での鑑賞・演奏体験ワークショップを実施した。
= 参加した事業 =
2019年度事業 基礎講座受講、実践セミナー講師
2020年度事業 基礎講座受講、実践セミナー受講、企画制作研修受講
2022年度事業 基礎講座受講、実践セミナー受講
= 事業に応募した経緯 =
2019年度に東京讃岐獅子舞のメンバーとして本事業のワークショップ「伝統楽器・芸能体験」の講師として参加したのがきっかけ。あわせて受講生として基礎講座を受講することで、伝統音楽・芸能は地域の課題を解決する際のプログラムとしての多様な可能性を秘めていることに気づくことができたので、翌年度以降も仕事と趣味の両面からの関心から継続参加している。
= 事業で学んだこと =
これまでの活動の中では意識をしなかった「アートマネジメント」という概念を持つことで、イベント開催の円滑化(関係者間のコミュニケーション向上も含めて)、収益性向上、イベント目的に対する効果向上といった多様な利点があることを学んだ。
また、伝統音楽や伝統芸能については、伝統の保存・継承という視点だけでなく、現代に合ったアレンジ、創作要素の付加といった可能性にも気づかされた。
= 事業で学んだことを活かせた事例 =
獅子舞に興味がある東京の子どもたちと、獅子舞が盛んな地域の子どもたちの交流イベントを企画している(2023年秋に実施予定)。地域の自治体や観光協会と連携しつつ、地域イベントへの出演だけでなく体験ワークショップの併催なども検討中。
= 今後のキャリアプラン =
まちづくりに関与する地域が今後拡大していく予定であり、当面は自分自身がまちづくり関連イベントにおいてアートマネジャーの役割を担うことで、地域における(民間主体の)アートマネジメントのあり方を模索したい。
将来は、各地域において、地元の人が主役でこちらはサポートする立場に徹し、アートマネジャーとなる地元の人を発掘し、その人との協働で企画を継続的に進めていける体制づくりを目指したい。
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